耳とあごが痛い病気とは?

耳と顎が痛い? 考えられる3大原因と注意したい病気とは

耳から顎にかけての間が痛む。耳と顎には意外な関連性があるのをご存じでしょうか。頭部の痛みや腫れなどの諸症状には思いがけない病気が潜んでいる事もあり、注意が必要です。今回は、顎と耳の痛みについて、考えられる原因をご紹介します。

耳と顎が痛い?考えられる3大原因と注意したい病気とは

1)耳と顎ってどんな関係性がある?

耳と顎は、直接関連が無いようにも思えますが、顔の周囲は非常に多くの筋肉でおおわれており、これが人間の豊かな表情を作り出します。顎から耳を直接つなぐ筋肉もいくつか有り、炎症などを起こせば痛みが生じます。また、神経も顔全体に張り巡らされているため、歯の炎症が耳や顎の痛みを引き起こす場合もあるなど、非常に密接な関わりがあります。

2)どんな症状が現れる?耳と顎が痛い場合の代表的な症状とは

耳だけが痛い場合や、顎だけが痛い場合にはそれぞれ原因が特定しやすいのですが、耳から顎など広範囲に痛みが広がる場合には特定が難しい場合もあります。ズキズキとした脈のあるような痛みであれば歯の炎症など口内の病気を疑い、筋肉痛に似た痛みや、刺すような鋭い痛みの場合には身体の病気を疑います。

歯の場合には歯科や口腔外科、それ以外の場合には一度内科を受診後に適切な診療科を紹介してもらいます。症状がすぐに治まった場合にはそれほど心配する必要はありませんが、断続的に発生したり、長く続く場合にはできるだけ早い段階で診察を受ける事をおすすめします。

3)どうして痛くなるの?考えられる3大原因とは

(1)歯ぎしり

寝ている時など、自分でも気づかないうちに歯ぎしりをしている人は意外と多くいます。環境の変化や心理的なストレス、また癖で歯ぎしりをしてしまう場合がもありますが、回数を重ねると歯が削れてきます。また、耳鳴りなども伴う場合がありますが、歯のすり減りなどで判断がつくため、症状が続くようなら歯科での診察を受ける事をおすすめします。

(2)う歯(虫歯)

奥歯などの虫歯が悪化して、痛みを生じる場合があります。歯の痛みは、虫歯となっている歯だけではなく周囲の神経にも刺激を与えるため、漠然と広い範囲が痛む事が多く見うけられ、その結果耳や顎の痛みと感じてしまう事もあります。痛みを感じる場所の近くで治療中だったり、治療を終えた直後などの歯がある場合には、虫歯が原因の可能性があります。この場合も、治療を行っている歯科を受診してください。

(3)筋肉の疲労

顎の筋肉は、毎日の食事や会話などで非常に使う事の多い筋肉です。固いものを食べる事が多かったり、スピーチや外国語の練習などで顎を使う機会が増えている場合には、筋肉の疲労により痛みを感じる事があります。

4)試せる応急処置とは?痛みへの対処方法とは

痛みを感じる場合には、症状のみを治療する「対症療法」ではなく根本となる原因を解消する事が大切です。しかし、痛みというのは実に耐えがたいもの。このような場合には、市販の湿布薬を貼ったり、鎮痛剤を飲む事で、一時的に症状を和らげる事ができます。

また、筋肉の疲労が原因の場合には、痛む箇所をマッサージする事で治りが早くなる場合があります。力を入れ過ぎず、ゆっくりと時間をかけてマッサージしてください。これらの対処はあくまで一時的に症状を緩和する方法ですので、症状が断続的に発生する場合や、長く続く場合には病気が隠れている可能性も考えられます。できるだけ早い段階で医師の診察を受ける事をおすすめします。また、診察を受ける際には、服用した薬の名前などが分かるようにしておき、申告するようにしましょう。

5)これって病気?病気かどうかのチェック項目と判断基準とは

痛みがそこまで強く無い場合や、すぐに症状が治まる場合には一過性のものである可能性が高く、必要以上に心配はありません。ただし、痛みが激しい場合や、腫れを伴う場合、また数日以上に渡って長引く場合には病気の可能性も高くなります。心配であれば、迷わず医師の診察を受ける事も大切です。

6)症状が続く場合は注意!考えられる5種類の病気とは

1)おたふく風邪

おたふく風邪は、正式には「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)と言いますが、その名の通り感染力を持ち、発症すると顔全体が大きく腫れる風邪です。多くの場合、子供の頃に経験するものですが、感染の既往歴(きおうれき、過去にかかった病気の歴)が無い場合には注意が必要です。大人になってからの感染は症状が重くなる場合が多く、40度以上の高熱により生殖機能に異常を来したり、妊娠中の場合には出産が難しくなる場合もあります。

(2)顎関節症

顎関節症(がくかんせつしょう)は、かみ合わせの悪さやストレス、歯ぎしりなどを原因として発症する病気で、口が開かなかったり、大きく開けると痛みを感じたりする病気です。また、顎を動かすときに音が鳴る場合は、痛みなどの症状が無くても顎関節症の可能性があります。

(3)外耳炎

外耳炎とは、耳の穴から鼓膜までの「外耳」と呼ばれる部分に炎症が起きる病気です。耳掃除のしすぎなどで小さな傷が耳にでき、そこから最近に感染する事で起こる病気です。多くの場合抗生物質の処方などですぐに良くなりますが、繰り返しの発生を起こさないためにも、耳のケアの仕方にも改善が必要です。

(4)リンパ節炎

「リンパが腫れる」とよく言いますが、そのリンパ節に炎症が起こった状態をリンパ節炎です。そもそもリンパは、ウイルスや細菌などと戦ったり、不要になった老廃物を処理する役割があり、リンパ管と呼ばれる管の中を流れています。そのリンパ管の節目にあたるのがリンパ節です。このリンパ節は、耳の下や首・脇などに多く集まっていますが、、細菌を食い止める役割も持つリンパ節は炎症を起こしやすくなっています。

(5)痛風

痛風は、身体の中に尿酸が溜まり、結晶化して激しい関節炎を伴う症状となる病気です。放置すると発作的に激しい痛みが襲う事もあり、早期の治療が必要です。膝などに発生するイメージが強い病気ですが、関節に炎症を起こすため顎の関節で発生する事もあります。ビールや脂肪などの生活習慣が原因となる場合が多いですが、遺伝によるものも多く見られます。

7)治まらない場合は専門家へ!症状への検査・治療方法とは?

歯が痛む場合や、顎の筋肉が痛む場合、また顎関節症が疑われる場合には歯科や口腔外科を受診します。それ以外が原因と考えられる場合や、原因がはっきりと分からない場合には内科を一度受診し、適切な診療科を案内される事になります。

(1)検査方法

歯科系の病気の場合には、レントゲン検査や医師の目視によって原因を調査します。また、内科系の病気の場合には血液検査が主に行われますが、リンパ節炎の場合にはファイバースコープで映像によって診断したり、エコーなどの画像診断が用いられる場合もあります。

(2)治療方法

病気によって大きく治療方法は異なりますが、いずれの病気も生活習慣を原因とするものが多く、原因を改善していく事となるでしょう。必要に応じて管理栄養士の栄養指導を受けたり、歯並びなどの口内環境を原因とする歯ぎしりなどの場合には歯並びの矯正などが行われます。

※耳から顎にかけての痛みの場合、食生活が大きく関わってきます。顎関節症を予防する為に日ごろから噛む回数を意識したり、また痛風を予防する為にはビールや脂の多い食事などは控える必要があるでしょう。また、いずれの病気においても、ストレスが原因となる可能性も高いため、日ごろからストレスフリーな生活を心がけ、発散する術を身に着ける事も予防のために大切です。

今回のまとめ

1)耳と顎ってどんな関係性がある?

2)どんな症状が現れる?耳と顎が痛い場合の代表的な症状とは

3)どうして痛くなるの?考えられる3大原因とは

4)試せる応急処置とは?痛みへの対処方法とは

5)これって病気?病気かどうかのチェック項目と判断基準とは

6)症状が続く場合は注意!考えられる5種類の病気とは

7)治まらない場合は専門家へ!症状への検査・治療方法とは?


多摩市永山 亀山歯科 東京都多摩市貝取1-17-3
京王永山駅,小田急永山駅より徒歩8分

女性に多い顎関節症

女性に多いかみしめ、あごがカクカク…これって顎関節症なの?

女性に多いかみしめなど、無意識に食いしばってしまうことで起こるものに『顎関節症』があります。パンを食べるときにあごがカクカク鳴る方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは顎関節症の症状のひとつです。

Q.顎関節症とはどのようなものですか。

耳の穴の約1cm前方に指を当てて口の開け閉めをしてみると、顎の動きを感じることができるところがあります。そこが顎関節と呼ばれるところです。顎関節症とは、この顎関節や顎に関連する筋肉(咀嚼筋)などのいろいろな症状や病態をいいます。

顎関節症の症状は主に3つです。
顎関節痛:口を開ける時に顎〈顎関節〉が痛くなる
関節雑音:顎がカクカクと音が鳴る
開口障害:時には口が開かなくなる

Q.顎関節症の原因には、どのようなことが考えられるでしょうか。

顎関節症はいろいろな原因が関わっていると言われています。
これらの生活習慣に思い当たることが多いほど顎関節症の症状が出やすくなります。

【歯ぎしり、くいしばり】
就寝中に歯ぎしりをしている、起床時や日中に気がつくと歯をくいしばっている状態は、顎関節症の原因となります。歯ぎしりや食いしばりは、顎関節やそれを支える筋肉に長時間異常な力をかけてしまいます。
【睡眠中の姿勢が悪い】
就寝中、うつ伏せや横向きで寝ると、片側だけの顎関節やその周囲に対して頭の重さで圧迫するような力が加わり続けます。すると顎関節に負担がかかってしまいます。筋肉に対しても圧迫が加わります。そのため、血液循環の低下が起こり、筋力低下が起こります。

また、仰向けで寝るときも高い枕を使用すると首が前に曲がり猫背のような姿勢になります。猫背は食いしばりをしやすい姿勢でもあり、顎関節の位置異常を引き起こす原因になります。
【食事中の癖】
いつも左右のどちらか決まった側で咬む癖も顎関節症の原因になり得ます。左右どちらか一方ばかりで咬んでいると、片側だけの顎に大きな負担がかかり、やがて下顎骨の変形が起きます。
【頬杖】
頬杖をつくと、下顎を押して顎関節を圧迫することになります。

Q.顎関節症になってしまった場合、どのような治療が行われますか。

一般的に顎関節症を疑う場合には、歯科医を受診してください。
歯科医院で行う顎関節症の治療には以下のものがあります。

【スプリント療法(歯科用マウスピース)】
顎関節の負担軽減 、周辺筋肉の緊張の緩和と歯の保護のために最もよく行われる方法です。
症状が軽減したと感じるのは、通常数週間から数カ月かかるようです。

【鎮痛剤や抗炎症剤などの服用】
急性症状の緩和目的で行います。

【レーザーなどの照射】
数回のレーザー照射で除痛効果が期待できます。

【咬合療法】
原因が咬み合わせの問題とされた場合には、歯列矯正などで咬み合わせを改善する処置をとることもあります。

【外科的療法】
顎関節の一部に明らかな異常があり、手術が有効な場合のみに行われます。

Q.顎関節症を放置した場合、どのようなことが起こりますか。

顎関節症を放置すると症状が悪化します。
・顎関節の変形
・関節円板と関節周囲の膜に癒着が起きる

この時にはカクカクという音は消えますが、重度の開口障害が出現するようになります。しばらくすると「ジャリジャリ」「ピキ」といった関節音が出るようになります。(専門的にこの音はクレピタス音と呼ばれています。)

Q.顎関節症にならないために、日常で気をつけることはありますか。

顎関節症状を訴える患者さんの多くは、歯列接触癖(Tooth Contacting Habit、通称TCH)という習癖があります。TCHとは日中の必要ないときにも、上下の歯を接触させている(咬み合わせている)ことです。

TCHがあると顎関節や筋肉に持続的な負担をかけるため、顎関節症を引き起こしやすくなるとされています。
TCHは顎関節症状に大きく影響する習癖なので、日中このTCHをしない様に意識をして生活する必要があります。この習癖がなくなると顎関節症の症状も緩和されてくるようです。

最後に医師からアドバイス

日本人の2人に1人以上の人に顎(顎関節)に何らかの症状を経験していると言われています。
しかし、治療を受けている人はその10%以下とされています。顎関節に何らかの症状がある人に男女差はありませんが、顎関節症の疑いで歯科を受診するのは、特に20~40代の女性に多いといわれています。

顎関節症は、軽い症状であれば特別な治療をしなくても、少し生活習慣を見直してもらうと症状が緩和されることも多いようです。

ただし痛みがあったり、口が開けにくい、食べにくいなどの症状があり日常生活に支障が出てくるようであれば、歯科や口腔外科を受診して、咬み合わせや顎関節を詳しく検査することをおすすめします。


多摩市永山 亀山歯科 東京都多摩市貝取1-17-3
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顎関節症TMDナビ|あごの痛みはパソコンが原因かも…

「顎関節症」に注意
顎関節症TMDナビ 多摩市永山 医科歯科ニュース

2012/2/9 日本経済新聞 プラスワン
一生のあいだに日本人の2人に1人が経験するともいわれる顎(がく)関節症。「あごが痛い」「口が大きく開けられない」といった症状に思い当たる人もいるかもしれない。以前は歯のかみ合わせが原因と考えられていたが、最近では生活習慣が発症の原因という考え方が主流になってきた。顎関節症になりやすい生活習慣を見直すことで、症状を緩和したり、予防したりできるという。

歯のかみ合わせや歯並びが顎関節症の原因と考えられていた頃は、歯を削ったり、マウスピースを使ったりして理想的なかみ合わせにする治療が一般的だった。しかし、こうした治療をしても、目立った効果が得られないことが多く、患者への負担も大きいことが分かってきた。このため顎関節症の要因になる癖を直す生活指導や、筋肉や関節のトレーニングによって症状を改善する治療法が採用されるようになってきた。

あごへの負担大きい パソコン操作

顎関節症とはいっても、痛みの出ている場所は顎関節そのものではなく、実際にはあごの回りの筋肉に痛みが生じている場合が多い。あご回りの筋肉に負担をかけるような生活習慣が顎関節症を引き起こしているからだ。ほおづえをついたり、寝転がって本を読んだりすることの多い人は、知らないうちにあご周りの筋肉に負担を与えているので要注意だ。

東京医科歯科大学の木野孔司准教授は「この十数年で顎関節症の新規患者数が増えたのは、パソコンが普及したことが原因の一つ」と見る。鉛筆やペンで文字を書いていた頃は、手が疲れるので数十分ごとに休憩していたが、パソコンでは数時間同じ姿勢でいてもあまり苦にならないからだ。特に下あごを前に突き出すような姿勢で画面を見る癖のある人は、あごへの負担が大きくなりやすい。定期的に休憩を取り、軽く体を動かすなどして、筋肉をほぐすようにするといい。

また、「上下の歯が接触する癖(TCH)はあごの筋肉に負担をかけ、顎関節症の要因になる」(木野准教授)という。リラックスした状態で唇を軽く閉じている時、上下の歯は接触せず、隙間が空いているのが通常の状態。唇を閉じた時にどこかの歯が触れている人は、TCHの可能性が高い。上下の歯が接触していると、あごの筋肉が常に緊張した状態になり、あごの回りの血流が悪くなって痛みが出やすくなるという。

TCHのある人は、職場のパソコンの画面や洗面所など、目に付きやすい場所に「歯を離してリラックス」などと書いた貼り紙をして、気づくたびに息を吐きながら力を抜くようにする。意識して上下の歯を離すようにするのは難しいので、「条件反射のように、貼り紙を目にしたらリラックスすることを習慣化するといいい」(木野准教授)。

日本歯科大学付属病院ではストレッチ運動やマッサージを勧めている。原節宏顎関節症診療センター長は「顎関節症の痛みはあご周辺の筋肉が肩こりのような状態になって起こることが多い。ストレッチやマッサージで血行を良くすると症状緩和につながる」と話す。

顎関節症に効果的なストレッチは左上図のように、片方の手を頭の上に添え、耳を肩につけるようなイメージで首の横側を伸ばす方法と、鼻を脇に近づけるようなイメージで頭を斜め前に倒す方法の2種類。下ろした方の手は床を触るつもりで下に伸ばし、30秒程度かけてしっかりとストレッチする。「左右交互に、3回ずつ、少なくとも朝夕の2回は続けるといい」(原センター長)という。

首の回りや、あご関節の周辺をマッサージして、筋肉をほぐすのも効果的だ。ただし、「甲状腺に病気のある人は、病気を進行させる可能性があるので、医師に相談したほうがいい」(原センター長)。

治療後に再発も

顎関節症は一度治療しても、生活習慣が変わらないと再発することが多い。今は症状がない人も、あごに負担をかける癖を続けていると、痛みなどの症状が出る可能性が高くなる。生活習慣の見直しやストレッチなどのトレーニングは自宅でもできることなので、思い当たることのある人は取り組んでみるといいだろう。

◇            ◇

音だけなら治療は不要

顎関節症の典型的な症状として、口を開け閉めする時に「カクン」という音や、「ザラザラ」というこすれるような音がすることがあるが、音だけならば治療の必要はない。顎関節で音が鳴るのは、膝の屈伸運動や首や肩を回した時に関節が鳴るようなもの。「耳のすぐ近くで鳴るので気になるだけで、あまり心配する必要はない」(木野准教授)という。

治療の必要が出てくるのは、口が大きく開けられなくなったり、口を開け閉めするときに痛みが出たりするようになってから。ただし、顎関節症の治療を専門に行う歯科医院は少なく、大学病院などでは予約待ちですぐには治療が受けられないこともある。東京医科歯科大学の顎関節治療部出身の歯科医らが運営する「次世代の顎関節症治療を考える会」のサイトでは、顎関節症に関する情報を掲載しているほか、メールでの問い合わせにも応じている。

(小国由美子)

[日経プラスワン2012年2月4日付]